稲作技術者・藤原長作氏が中国に残したもの~拓殖大学・岡田実教授に聞く(上)

2018-10-10 00:00  CRI

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聞き手:王小燕

 今回は改革開放40年周年ならび中日平和友好条約締結40周年記念特別企画です。日本の対中政府開発援助(ODA)の現場で活躍した後、現在は大学で教鞭をとりながら、「現代中国、日中関係、対外援助、国際協力」を専門に研究活動をしている拓殖大学・岡田教授にお話を伺います。

 岡田教授は中日の相互理解が進まない原因の一つとして、記憶の在り方に違いがあるとみています。戦争時代の記憶がその最たる例ですが、戦後の歴史を例にとってみても、例えば、多くの中国人が人道主義から助けた日本の「残留孤児」、「残留婦人」の歴史は、当事者の方が深く記憶に残っていても、必ずしも両国国民の間で広く知られていません。改革開放後の歩みを振り返ってみても、中日両国の人々が技術協力や連携により、多くの記念すべき成果を残した事例がたくさんあります。しかし、それも必ずしも記憶の記録づくりがきちんと行われていないと指摘しています。

 このような視点から現代の中日関係史に切り込んでいる岡田教授に、今週と来週2回に分けてお話を伺ってまいります。これまでの40年における中日協力を、主に2つの具体的な事例を通して振り返っていただきます。

 今週は主として、1980年代初頭、寒冷地での米作り技術を中国に伝えた日本人農業専門家の藤原長作(1912-1998)のこと、そして、藤原氏が最初に稲作試験を行った黒龍江省方正県から見た日中の未来を眺めます。

 次回は、1990年代初頭、中日が連携して、山東省でのポリオ(小児マヒ)撲滅に向けた取り組みです。この提携が成功したことで、中国がWHOに中国でポリオが消滅したと報告することができました。

 こういったような具体的な提携、協力の事例を通して、日中の戦争・国際人道主義・開発協力の「記憶」や、日中協力の今後のあり方についてリスナーの皆さんと一緒に考えたいと思います。

◆藤原長作氏が中国に残したもの

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「中日友好園林」内に建立された藤原長作氏の記念碑 

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 記念碑の文

 黒龍江省方正県中日友好園林に建てられた「藤原長作記念碑」には、藤原長作のことについて、次のような碑文で紹介しています。

 「藤原長作(1912年12月3日-1998年8月7日)氏は、日本国岩手県沢内村出身。1981年から1998年まで、古希の年を以って中日友好事業に身をささげ、前後6回、自分から望んで、自費で方正に来訪し、無償で寒地水稲乾育栽培技術を伝授し、方正県ないし全中国の水稲生産技術革新に突出した貢献をし、方正県と日本国との科技交流の成功モデルとなった。

 その後、沢内村村長太田祖電の推薦を経て、佐々木寛、有馬富男が方正で水稲超稀植試験を進め、藤原長作水稲栽培技術をさらに豊富に発展させた。

 藤原長作には「方正県栄誉公民」が授与され、黒龍江省科技貢献奨、中国国際合作奨を獲得した。」 

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2011年に開館した「方正稲作博物館」の外観 方正稲作博物館」の外観 

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稲作発展史の展示に登場する藤原長氏 

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「藤原長作氏と寒地水稲乾育稀植技術」の展示 

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1980年代方正県科学技術委員会試験小組と藤原 

 また、2011 年、黒竜江省方正県に開館し、中国で初めてとなる稲作博物館では、藤原氏の業績を日本語で次のように説明しています。

 “1981年に日本の水稲専門家藤原長作先生と一緒に「寒地水稲乾育栽培技術」の 試験に成功した。水稲の単位面積産量は 200キロから500キロに上がった。1988年11 月に、この技術は「中国科学技術進歩賞」の二等賞を獲得した。1989年に、中国科学技術委員会はこの技術を重要な普及プロジェクトに列した。第8次五ヵ年計画期間中、全国の栽培面積は2.3億ムーに達し、平均単位面積産量は84.63キロで、152.7億キロの籾も増産した。これは寒地水稲乾育栽培技術に新紀元を開き、国家糧食安全の保障にも大きな貢献をした。”

 では、藤原氏はどのような気持ちで中国での農業指導に携わったのでしょうか。中国人ジャーナリストの記録によりますと、藤原氏が1980年に中国を訪問した際、次のように心境を語っていました。

 「もし皆さんが自分を歓迎してくれたら、自分の増産技術を普及させたい。技術伝授の目的は、中日両国人民の世世代代の友好と、貴国が早期に四つの近代化を促進するためである。過去に日本の軍国主義分子が中国を侵略し、多くの無辜の中国人に危害を加えた。私は当時中国にまだ来ていなかったが、日本国民として深く疼きを感じる。自分は共産党ではないが、ベチューインを知っている。彼は偉大な国際主義戦士であり、私は彼に学ばなければならない。自分が伝授する技術に報酬は要らない。日中友好の架け橋になり、自分の実際の行動を以って、中国人民に罪を償いたい」

 番組の中では、2017年夏に岡田教授が方正県の現地を訪問した際の見聞なども紹介します。詳しくは番組をお聞きください。(資料写真提供:岡田実教授)

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藤原が寄宿した富余村の杜荫武家

推薦文献:

 (日本語)
 及川和男『米に生きた男 日中友好水稲王=藤原長作』筑波書房、1993年6月
 大類善啓「水稲王 藤原長作物語 中国の大地に根づいた日中友好の絆」
 『風雪に耐えた『中国の日本人公墓』ハルビン市方正県物語』(方正友好交流の会編,2003)

 (中国語)
 郭相声・曹松先・林長山編著『藤原長作先生在方正』中国香港天馬図書有限公司出版、2012 年 10 月

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2012 年出版の「藤原長作先生在方正」

【プロフィール】

 岡田 実(おかだ みのる)さん 

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拓殖大学国際学部 教授
 専門分野:現代中国、日中関係、対外援助、国際協力

 東北大学法学部卒業後、民間企業勤務を経て、1988年に国際協力事業団(JICA)入職。JICAでは北京大学留学、中国事務所員、中国援助調整専門家、中国事務所副所長として約10年間対中政府開発援助(ODA)に従事した他、本部、外務省経済協力局、JICA研究所等で勤務。
 2010年、法政大学大学院で政治学博士号を取得し、2012-13年度法政大学法学部兼任講師。2014年度より現職。現在、大学で教鞭をとるかたわら、NPO法人日中未来の会、一般社団法人国際善隣協会などで日中民間交流活動に参加している。

【主な著書】
 『日中関係とODA—対中ODAをめぐる政治外交史入門—』(日本僑報社、2008年)
 『「対外援助国」中国の創成と変容1949-1964』(お茶の水書房、2011年)
 『ぼくらの村からポリオが消えた—中国・山東省発「科学的現場主義」の国際協力』(佐伯印刷出版事業部、2014年)。

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12月15日放送分
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